ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

母のスマホデビュー

 母のラインの返信に見馴れないスタンプが押されている。思わず「おっ🎵」と歓声を挙げた。スゴイ。よくぞここまで…、と感動した。

 84才の母がスマホデビューをしたのは、二か月前。父の四十九日の日だった。そこから母は、この不可解な代物に悪戦苦闘するのだが、感心するのは全くへこたれず、何度も果敢に挑戦することだ。離れて暮らす私には、電話で何度も使い方やトラブルを相談してくる。相手の画面が見えない状態では状況も上手く伝わらず、決してスマホが得意ではない私では解決までに一時間以上、ということも何度かあった。ウンザリして投げ出してしまうのではないかと最初は心配したが、母は全くそんな気配を見せず、上手くいくと「あー、できたできた🎵」と無邪気に喜んでいる。さらには、自分で本を買って操作方法を学んだりしてしまうほどの前向きさである。

 私も、母からのスマホ相談を、ある種のミッションとして楽しんでいる。何度も同じことを聞かれ、10年前なら「それ、前にも教えたじゃない。」とでも言ってしまいそうなところだが、今では自分にも身に覚えがあるので、すこぶる寛容でいられる。ラインなどで最初は打ち間違いだらけの奇妙な文章ばかりが送られてきたのが、ここへ来て写真が送られてきたり、冒頭のようにスタンプが押されていたりすると、教え子の成長を感じるようで嬉しくなる。

 そもそも母は、こういう人だったんだなぁと、あらためて思う。母は、自ら強く主張するわけではないが、楽しいこと、ワクワクすることが好きなのである。うまくいかなくてもへこたれず、果敢に挑み、楽しいと無邪気にそれを表現する。
 
 昔、父と母が道東の旅行から帰ってきた時、父がおかしそうに「お母さんは牧場の牛を見て、『お尻が画張っている』と大興奮だった。」と旅の思い出を話してくれた。その時の父の楽しそうな、ちょっと自慢げな顔を思い出し、「お父さんはお母さんのここが好きだったんだなぁ。」と思った。父はきっと今も母の奮闘ぶりを、仏壇からあの顔で眺めているような気がする。