ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

今日の一番

 健康のために、週に三回ほど近所の遊歩道をジョギングしている。ウォーキングでもいいのだが、せっかちの私は手っ取り早く「頑張ってる感」を感じたくて、ついつい走ってしまう。決してアスリート風ではないヨタついた感じのジョギングは、傍目にも健気に映るのか、すれ違う方が時に声をかけてくださるのが嬉しく、励みでもある。

 いつもは午前中に出かけるのだが、今日はあれこれ用を足しているうちに昼を過ぎてしまったので、それなら少し涼しくなってから‥と珍しく夕方から走り始めた。

 時間帯が違うと、すれ違う人も変わる。少々気恥ずかしく思いながら走っていくと、買い物に向かう途中のおばさまが正面からやって来て、ヨタヨタ走る私を物珍しそうに見つめている。そして、すれ違いざまにちょっと親しげな表情で
「死ぬよ」
と一言のたまったのだ。
 
 思わず吹き出し、 
「気をつけます」と返事をすると、その方もニヤリと笑い、通りすぎた。
 
 そのあと、楽しくておかしくて、頭の中で何度も「死ぬよ」が繰り返された。初対面の人に「死ぬよ」とは衝撃的だが、あの「死ぬよ」にはおばさまの表情とかしぐさもミックスされて
「こんな暑い中、よく走る気になるね。」に始まり、「頑張ってるね」とか「いつも走ってるのかい?」とか「気をつけなさいよ」とか色んな意味が凝縮されて、ズドンと伝わってきた。すごい!絶大なインパクトの一言に、「今日の一番」を進呈した。

 あのおばさま、只者ではないぞ、と密かに思っている。その夜、家族に
「今日、知らない人に『死ぬよ』って言われたさぁ!」と、私ははしゃいで報告したのだった。