次男の水筒の底にある小さな穴にセロテープが貼ってあるのを発見した。それを見つけた私は、そのセロテープの意味を瞬時に理解した。
その穴は、直径一ミリ位の小さな穴で、もともと空いていたものなのだが、水筒を洗うとそこに水が入り込む。洗い終わって臥せておいた水筒をもとに戻すとその穴から水が流れ出てくるので、そこに水溜まりができてしまうのが難ではあったが、そういうものだと割り切って使用していた。
その穴にセロテープ…。
これは次男の仕業に違いない。その推理は私の頭のなかにあっという間に出来上がった。
たぶん、臥せておいた水筒を使おうとした彼は、底から水が出てくるのを見て「手荒く扱って壊してしまったのか💦💦」と焦ったに違いない。焦って、何とかしようとして、そして…セロテープを貼ったのだ。
ここで普通は
「いやいや、そういうときはセロテープじゃないでしょ。」と思うに違いない。せめてタオルをあてるとか穴を埋めるとか…。セロテープでは、流れ出る水を止める効果は期待できず、なんの解決にもならないだろうと。
しかし、私は彼という人を知っている。彼は昔から「壊したものにはセロテープを貼る」のである。
私が大切にしていた陶器のふくろうの置物を割ったときも。
イライラして部屋にあったプラスチック製の引き出しを蹴った拍子に、その取っ手部分が割れたときも。
セロテープでくっつけても、ふくろうはひしゃげていたし、取っ手として役に立つはずもなく、見た目もごまかしようがない。それなのに、である。
そんなセロテープ神話が十指に余るほどある。次男は、壊したものをごまかそうとするときに、なぜかセロテープに頼ってしまう、そういう人なのである。
最初は、壊したものを「ごまかそう」としているところが気に入らず、「なぜ正直に言わないのか。」とその都度私に叱られていた。
しかし、余りにセロテープ神話が続くので、今度は「少しは頭を使いなさいよ!」と怒られることになった。なんの効果もないセロテープをなぜ貼るのか。
それでも彼はセロテープを頼り続け、こちらもちょっと疑うようになった。これは「壊れたものにはセロテープを貼る」という、彼の習性なのではないか?と。
ここ最近はその怪しげな習性もなりを潜めていたのだが…しかし、この水筒のセロテープは、どう考えても…。
いやいや、そう決めつけてはいけない。彼も今は中学生なのだ。そう考え直して、次男に向かって
「ねえ、水筒にセロテープ貼った?」
と聞いてみた。
すると彼は
「えっ?知らない。」
と答えながら近づいてきて、まっすぐに水筒の底に手を伸ばして、セロテープを剥がした。
やっぱり💦💦