ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

「笑わせてくるか」

 次男が所属している野球チームは、今新人戦のリーグ戦真っ盛りで、週末になるとあちこち試合に出かけている。田舎の町のチームなので、他の都会のチームに比べると人数はかなり少ないが、チームワークは天下一品である。

 その試合、強豪チーム相手にかなりの善戦だった。2対2で相手チームの攻撃、ノーアウト満塁のピンチを必死の守りでアウトを重ねツーアウト。

 あとアウトひとつ❕皆がそう祈るなか、相手の打球はサードに飛んだ。サードは1年生ながらに打っても投げても守っても定評があるSくん。鋭い打球もS君は軽快な動きで捕球し、一同安心の吐息を漏らした。

 ところが、力が入ったのか、そのあとのファーストへの送球が高く浮いてしまった。ファーストが捕球できず、その間に2点入れられた。そして結局、そのまま2対4で負けてしまった。

 試合後、ピッチャーの肩を冷やすための氷を手分けして割っている選手たちを手伝った。口数の少ない彼らから悔しさが伝わり、親たちも黙々と作業をしていた。

 その仕事が一段落したとき、選手たちはスッと立ち上がり「さぁ、Sを笑わせてくるか。」と言って遠征バスへ戻っていった。悔しさと申し訳なさで居たたまれないであろう後輩を気遣い、特に気負うわけでもなく自然と出たセリフだった。それが仲間として、先輩として「当たり前」だと、彼らは野球を愛するなかで知ったのだ。

 この大会の直前に団を去ることになった監督は、指導の目的は「人間教育」と言い切っていた。監督から野球を通して学んだことは、選手たちの中に宝物のように残っていく。それは、監督が去ったあとも、きっと変わらない。