ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

ごゆっくり

 朝、久しぶりに実家に電話すると、「今忙しいから~」と言われ、折り返し電話が来たのは昼過ぎだった。

 父は介護保険を使ってのリハビリへ、母は趣味の卓球に行っていて、今戻ったとのこと。楽しい日課を過ごし、2人ともメチャメチャ陽気で、圧倒されるほどだった。

 こんな幸せなやりとりができるなんて、と感謝の気持ちでいっぱいになった。


 1年前、父は入院していて、抗がん剤治療を行っていた。母はほぼ毎日病院に通い、そんな父を支えた。

 父としては、人生の終わりを見つめながらの治療は不安だったろうし、治療が思うように進まないことへのいらだちとも戦いながらも、弱音を吐かずに頑張っていた。

 母も、そんな父を受け止めようと必死だったが、かなり疲れており、それでも光を見いだそうと踏ん張っていた。

 そんな時、電話をすると、2人とも離れて暮らす娘に心配をかけまいと精一杯元気に振る舞ってくれていた。そして私も、2人の不安を少しでも振り払い、力を抜いてもらおうと、必死に話題を探し、自分の役割を果たそうとしていた。

 今の2人の電話の明るさは、去年の戦いを乗り越えたことへの喜びが溢れているのだった。

 父はリハビリ施設が書いてくれるノートのコメントを楽しみにしていて、「仲間もできたし楽しいぞ。」と自慢げに話してくれた。ずっと日課にしていた雪かきも復活したようで、リハビリしてるのに雪かきなんかしてさぁ、と笑っている。

 母は、「お父さんが元気で、これじゃ私の方が先に逝ってしまうかも。」とこれまたカラカラと笑っている。その言葉は、自分が残されてしまうかも、という不安から開放された安心感が言わせているのが伝わってきた。

 父は「もう少し生かしてもらうことにするわ。」とおどけて言った。私は

「どうぞごゆっくり」

と答えた。2人は朗らかに笑ってくれた。