ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

扉のリフォーム

 我が家を建てて、そろそろ25年になる。愛着はたっぷり感じているが、あれこれインテリアを工夫するのが小さい頃からの楽しみだったので、模様替えなどを繰り返しながら小さな変化を楽しんでいる。リフォーム、リノベーションなどという言葉にはテンションがあがりまくるが、そんなことを繰り返す余裕はない。自分でDIYするほどの技術やセンスもない。なので、「こんな風にできたらいいなぁ」というアイデアを貯めて、空想して遊んでいるのが、最も現実的な楽しみ方である。

 春に亡くなった父が最後にお財布に入れていた現金を、母が「お父さんからの最後のお小遣い」といって子どもや孫に分けてくれた。そのお金を、ずっと残るものに使いたくて、あれこれ思案していたが、ある日ふと思いついた。

 空想の世界で楽しんでいた小さなリフォームを、ひとつ試してみよう、と。

 それは、ごくシンプルな我が家のトイレの扉に、自分で作ったステンドグラスをはめ込む、というものだ。たぶん器用な人なら自分でできてしまうのかもしれないが、模様替えと違って失敗は許されない。かといって、新しい扉を作ってもらうには大がかり過ぎるので、手作り家具職人さんに頼んで、既存の扉を加工してもらうことにした。

 地元の小さな工房に電話して、要望を伝えると、色々相談に乗ってくれた上に、たくさんの仕事の合間を見つけて、このささやかな注文を請け負ってくれることになった。

 注文をしてから2ヶ月たった昨日、職人さんが扉とステンドグラスを取りに来てくれた。扉がない間は、扉の代わりにコーヒー豆の麻袋をかけて、あえて「厠」っぽいトイレを家族で楽しんだ。

トイレの扉がないのは大変でしょう、と気を遣って急いでくれたのか、翌日には仕上げて持ってきてくれた。

 扉がもとの位置に収まったとたん、長年頭の中で空想していた風景がそこにあることに感動した。既存のものでも何も不便はない。でも、世界でひとつだけのこの扉は、以前のものとは思い入れ度が断然違う。

眺めてはニヤニヤ、が止まらない。お父さん、ありがとう。最後のお小遣いは我が家の一部になったから、ずっと大切にするね。