ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

コケコッコ花の思い出

 今年の春、庭にタチアオイの苗を植えた。7月は雨が極端に少なく心配したが、なんとか無事に根付いたようで、背が低いながらもたくさんの花をつけてくれた。

 この花は、子どもの頃「コケコッコ花」と呼んでいた。花びらの付け根を開くと粘り気があるので、そのまま鼻の頭にくっつけたりして遊んでいた。それが鶏🐔のようだから、コケコッコ花。「タチアオイ」という本名を知ったのは、大人になってからだった。

 コケコッコ花は、近所の庭先に咲いていて、私たちはそこから勝手に好きなだけ摘んでいた。惜しげもなく人様の花を摘むことに、その時は全く頓着なかった。他にも、「トキシラズの花」は誰某の家の玄関前に、などと我がもののようにとってきては、ままごとの具材にしていたものだ。

 花だけではない。近所で缶けりをするときは、子どもたちは一斉にあちこちの家の庭に散っていった。今のようなオシャレなガーデンではなかったが、それでも家の庭先に子ども達が出入りし、走り回っていたのだから、今ではとても考えられない。

「おおらかな時代」と言ってしまえばそれまでだが、その時代を生きた私も、今自分の庭に知らない子どもが入り込んで花を摘んだり走り回ったりしていたら、決して「おおらか」ではいられない。

「時代が変わる」ということは、つまり、「自分が変わる」ということなのだなぁとあらためて感じた。

 もう時代は戻らないのかもしれない。けれど、自分はそのおおらかさに育てられたということは、時々考えておきたいなと思う。そんなことを考えながら、我が庭先を横断する猫を、「おおらか」に見送った。