ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

願いは叶えられていた

 わが町に桜の便りが届いた頃、とても驚いたことがあった。

窓の外に桜の花が咲いたのだ。

 我が家の裏の土地は、家などなにもない笹藪で、普段はおそらく動物以外は脚を踏み入れない場所だ。私にとっても、そこはどこか絵のようで、すぐそばなのに自分とは関わりのないエリアと感じていた。

 それにしても、ここに20年以上住んでいて、その桜に気がついたのは初めてだった。確かにこの10年は転勤族となって、空き家にしている期間が長かったが、それでも5年前に一度戻ってきて2年間過ごしていたので、あの大きさの木がなかったはずはない。

私と同様主人も驚いたので、私が桜の存在を忘れていた、というわけではないようだ。

 どうにもふしぎで、隣人に「あの桜の木って前からありました?」と聞いてみた。もしかしたら、隣人が思い立ってあそこに植えたのかも、と思ったのだ。
 すると、10年ほど前から住んでいる隣人は「ええ、前からずっとありましたよ。」と答えた。さらにビックリした。

 実は以前(10年以上前)、庭でお花見ができるような桜の木が近くにあるといいのに、と真剣に考えていたことがあった。うちの庭にはその余裕はなく、この笹藪に桜の木があったらなぁと。

その頃、あの桜の木はどんな風だったのだろう。あそこにあって、まだ小さくて花も遠くからは気がつかないくらいだったのかもしれない。でも5年前は?花が咲かなければ、気がつきようもないが、いくらなんでも、それなりに大きくなって、時期には花も咲かせていただろう。

 私は、そこにはない、と思い込んでいたので気がつかなかったのだ。せっかく咲いていた桜の花にも目が止まらず、「笹藪」でしかなかった。

 当たり前の毎日、同じような毎日にどっぷり慣れきってしまうと、こんな幸せを逃してしまうんだなあと、あらためて自分の鈍感さを反省した。人生の残りの時間は、もっと周りの当たり前に心を配り、些細な変化を慈しむようでありたい。

 そしてあらためて、10年以上かけて、私の願いは叶えられていたことに心から感謝した。