ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

春の神様

 今朝、朝ごはんを食べていたら、コツコツと何か音が聞こえてきた。初めは気にならなかったが、途切れることなく続くその音に意識を向けないわけにはいかなくなった。

 主人も私も、まず同じタイミングで次男の足元に視線を向けた。貧乏ゆすりを疑ったのだ。しかし、彼の足は不動のまま…。
 
 次に疑ったのは「灯油切れ」だ。何度か灯油の注文を忘れ、灯油が切れてしまったときのストーブから聞こえる「ドクドクドク」という音。しかし、灯油はまだ十分あることを、数日前に確認したばかり。

 三人顔を見合わせて、もう一度耳を澄ませると、どうやら音は、外から家の壁を叩くように響いていることがわかった。

 さらに顔を見合わせる。主人と次男はパジャマのまま。着替えているのは私だけだ。仕方なく、私が外に偵察に出ることになった。

 外に出て、音の出どころを探すと、なんと、音は玄関横に併設されている鍵がかかった物置のなかから聞こえている。そんなはずは、と何度も確認するが、やはり音はそこから聞こえるのだ。

 だれかいるのか?
物置のドアをノックしてみる。ノックに応じる反応はないが、相変わらずコツコツは聞こえている。

 何度もドアノブに手をかけるが開けることができない。なにか(誰か)が飛び出して来るのでは…⁉️覚悟ができず、家に駆け込み、主人を呼んだ。

 逃げられない状態となった主人は、パジャマを着替え、外に出て物置の様子をうかがう。ノックしてみるが、音の発生は変わらないまま…。

 もう開けるしかない。
主人は玄関から金属バットを持ち出し、それを振り上げながら、私はその後ろに怯えるように引っ付きながら、息を止めるようにしてドアをそっと開けた…

 中からは何も飛び出してくることはなく、物置の中にも何もいなかった。 
 ただ、ドアを開けたときから「コツコツ」の音はピタリと止んだ。それだけだった。

 なんだったんだろう。
主人と私は、二人で顔を見合わせた。

 もしかしたら、春の神様がうちの物置で冬眠していたのかも…。我が家の引っ越しを見越して、ちょっと早めに目覚めたのかな。そして、うちより少し早めに新たな旅に出かけたのかもしれない。

 ちょっと不思議な出来事に、かなり勝手な解釈を乗っけて、「まぁいっか。」と家に入った。

 朝っぱらからバットを持って怯えながらドアノブを開けようとする主人と、その後ろにつきながら何かあったら玄関に逃げ込む準備をしている私。はたからはどう見えていたんだろうという想像と緊張からの解放感で、爆笑しながら家に入った。