今、私は趣味に没頭している。
もちろん、「楽しいから」であるが、その楽しさに力を借りて、傷を癒している、といった方が言い得ている。
受験生の次男は勉強嫌いで、当然のことながら、受験勉強は進まない。こりゃヤバイぞ、母ちゃんがひと肌脱ごう!と勉強を手伝い始めたのはコロナで休校の頃。最初は効果をあげていたものの、私の悪い癖でつい前のめりになり、そのうち次男の方が消化不良を起こした。
家庭内の不穏な雰囲気を察知した主人が「ストップ」のジャッジを下し、かくして勉強は自分自身で、という当たり前の形に戻ったのである。
この主人のジャッジはありがたかった。相手によかれと思ってやっていることが、次男の成長の機会を奪っていることに、薄々気がついていながらやめられなかった。彼の人生なのだから、失敗して学べばいいのである。自分の不安を減らしたいためのお節介だったと気がついた。
しかし、前のめりになったエネルギーはまだ私のなかに燻っている。狭い家のなかでボーッとしていようものなら、次男の行動をつい気にして一喜一憂してしまう。
というわけで、今までペースダウンしていた趣味に没頭し、邪念を追い払おう、という作戦に出たわけである。
ステンドグラスの大作に挑んで、夕食後も作業台に向かっている私のところに、休憩中の次男がのぞきに来た。
次男「まだやってんの?」
私「うん。もう少し」
次男は「へぇ~」と、応えたあと
「頑張ってね。」
と言って部屋を出ていった。
私は
「うん」と答えたあと
「そっちもね」
と、心のなかで呟いた。