ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

家族センサー

 もうすぐ、特別な三月が終わる。

 新型コロナウイルスの影響で、外出もままならない中、長男が大学を卒業し、社会人としてスタートするまでの期間を自宅で過ごした。次男は学校が休校中だし、世の中には自粛生活を求められていたので、計らずも家族そろって密接な時間を過ごすことになった。

 そうなってすぐ、今までにない「戸惑い」を感じるようになった。夫と息子達、3人の声が区別できないのである。

 その大きな理由は、次男が遅ればせながら「声変わり」を迎えたことである。さすが血は争えず、声変わりした息子二人の声は主人にそっくりで、夫と次男の二人でも少々戸惑っていたところに長男が加わったことで、さらにわかりづらくなった。

 台所で作業をしながら、背後でおしゃべりする3人の会話を聞いていても、誰が話しているのか勘違いしたまま振り返って、「あれっ?」と自分だけついていけないことが続いた。そうなってしまう理由がすぐにはわからず、数日たって、ああそうか、と気がついた。

 しかし、そう気づいても、その影響はなかなかなくならない。

 特に外出する用事もないので、休日の朝、ノンビリ布団の中でまどろんでいたら、居間から主人が1人で喋り続けているのが聞こえてきた。何をしているんだろうと起きていったら、3人で会話しながらテレビを観ていた。想像と現実の映像のギャップに笑ってしまった。

芦田愛菜ちゃんはエレベーター式の学校だから」と言っている声に「それはエスカレーター❕」と我が家の『言い間違い番長』の次男に向かって突っ込もうとしたら、これから社会人デビューする長男の発言で、お互い苦笑したこともある。

 声のトーンや話す内容で判別していた私の家族センサーは、三人勢揃いが久しぶりなだけになかなか調整ができず、台所に立ちながら何度か振り返り、確認するのが日課になった。

 世の中では大変なことが起こっている。その不安は生活全体にも影響しているが、だからこそ、こんな何気ない戸惑いを感じられる家族の時間は、とてもありがたく、幸せだと思った。

 先ほど、新生活に旅立つ長男を、駅で見送った。家に帰ってきたらソファーがとても広く感じて、戸惑っている。
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