ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

カラーテレビが来た日

 自分の小さな時の記憶で、鮮明に残っているもののひとつに「カラーテレビが来た日」がある。

 まだ、幼稚園にいっていた時のことだから、五、六才のことだ。カラーテレビが我が家にやって来るというので、幼稚園の友達にも先生にも「今日うちにカラーテレビがくる!」と宣伝しまくった覚えがある。

 購入したカラーテレビは日立製の「ポンパ」という製品だった。なぜ「ポンパ」というのかというと、スイッチ(確か押したり引っ張ったりするものだった)をつけてもそれまでのテレビは画面が映るまでにしばらく時間がかかったが、この「ポンパ」はスイッチを「ポン」とつけると「パッ」と画面がつく画期的な製品だったのでそんな名前だったのだ。その事も友達に自慢した覚えがある。

 出入りの電気屋さん(というのが当時はいたのだ)が、テレビを家に運びいれてくれたとき、画面には「ポンパくん」というカラフルなオウムのキャラクターの大きなシールが貼られていた。テレビを観るには、そのシールはもちろんはがさなくてはならなかったが、私はそのシールもものすごく貴重なものに感じて、画面からはがしたこのシールをどこに貼ろうかと真剣に悩んだことも覚えている。

 当時よく観ていた子ども番組「おかあさんといっしょ」をカラーテレビで初めて観たとき、三角や四角の形のアニメーション(だったかなぁ)の何かの色が、それまで赤だと思っていたのが緑だったね、と姉と話した記憶もあるのだが、そもそも白黒テレビで「赤」とわかるはずもないので、これは私の記憶違いなのかもしれない。

 記憶力が低く、人の顔と名前もなかなか定着しないのがコンプレックスの私でも、こんな風に切り取られた写真のようにはっきり残っている記憶がいくつかある。カラーテレビの購入は、それほどまでに強力なインパクトだったのか。

 ただ、この記憶、正確なものかどうかは確認できない。その場にいた両親や姉が同じように写真を切り取ったかどうかはわからないので。
  
 けれど、この記憶はもう死ぬまで忘れずに残るのだな、と感じる。自分の意志とは違うところで、記憶のシャッターが押されている。他にも普段忘れていても、何かのおりに記憶のアルバムを開いたとたん、その切り取られた場面がよみがえることがある。そして、「ポンパ」なんて名前までよみがえってしまうのだ。