ごはんとみそしるの日記

日々のあれこれ

「不安」と戦っていた

 山口県で三日間行方不明になって、無事発見された二歳の男の子が退院した、というニュースを見た。

 なんとか見つかって欲しいとずっと祈っていたので、本当に安心したし、発見してくれたボランティアの尾畠さんの人間性にも心から尊敬の気持ちを持った。

 しかし、退院したよしきちゃんの姿をテレビで見たとき、全く別の感情が沸き起こってきた。

 力が抜けたようにくたっとお母さんに身体を寄せ、不安そうにお母さんにしがみついているよしきちゃんの姿が、19年前突然脳腫瘍が見つかり、手術をされたあとの長男の姿に重なって、フッとその頃にフラッシュバックしたのだ。

 病気が見つかり、一週間後に手術をすることになり、即入院となった。毎日何度もいろんな検査が行われ、まだ三歳だった長男はその度に眠るための薬を処方された。しかし、いつもと違う雰囲気になかなか寝付けない長男、なんとか必死に眠らせようとする私と主人。…私達は病気を受け止めるだけで精一杯で、その状態での更なる入院中のストレスの連続に壊れそうだった。

 手術の日、不安そうな長男を抱いて手術室につれていき、入り口で看護婦さんに抱き渡した。ずっとこちらを見て泣いている長男の姿が目に焼き付いている。

 手術が終わったあとしばらく、長男は笑わなかった。突然の入院、手術、そしていつもと違うテンパっているパパとママ。どれだけ不安だったかと思う。

 三日間たった一人で過ごしたよしきちゃんの不安の大きさが、お母さんに抱かれているその全身から感じられて、それであらためて、19年前の長男があの時感じていたであろう不安の大きさに思い至った。

 私達は、長男を失うことの恐怖で、病気の行方にばかり気持ちが奪われていた。あの時、長男は「病気」ではなく「不安」と戦っていたのだ、とあらためて気づいた。

 もうすぐ帰省してくる長男。帰ってきたらギュッと抱きしめたい、と思った。